病気の解説
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頻尿や下痢などを伴う腰痛「脊髄終糸症候群」とは

「脊髄の緊張」による腰痛

ヘルニアも脊柱管の狭窄もないのに、強い腰痛や下肢痛、頻尿などを呈する病気は、これまで原因がわからない腰痛として医療界ではほとんどお手上げの状態が続いてきました。しかし、原因不明の腰下肢痛の一つとして最近医療界で新たな原因がわかってきました。

 

この病気の原因が「脊髄の緊張にある」という新たな発想です。検査等で見つからない腰下肢痛は当院のホームページにもいくつか書いてありますが、それらとは別に新しい発見の一つです。

 

脊髄終糸(せきずいしゅうし)神経とは

少し難しいかもしれませんが、簡単に脊髄終糸神経について説明しますね。

 

「脊髄神経」という大切な神経が背骨に沿って通ってるのは聞いたことがあると思います。腰のくびれあたり(L1〜L2)までがっしりとした神経で(脊髄円錐)、その先からは細くなってお尻まで通っています。脊髄は硬膜と呼ばれる膜で包まれ守られていて、膜はお尻のあたりでは糸のように細くなっています。この部分を脊髄終糸といいます。

 

通常、脊髄終糸はやわらかいゴムのようなもので、伸び縮みする事によって脊髄を守っているのですが、何らかの原因によって硬くなる事があります(生まれつき硬い人もいます)。

 

その様な人は前屈した時に終糸が硬くて伸びない為に脊髄が引っ張られてしまい、この姿勢を繰り返したりする事によって脊髄の中の血流が疎外され、痛みが出る原因となっているのです。

 

若い方だけでなく50代以降にも発症

好発年齢は10代から30代の若い年代に多く、腰椎ヘルニアの好発年齢と重なります。また、症状も腰痛や下肢のしびれなどヘルニアと似ているため、慎重な鑑別診断が必要です。

 

御多分にもれず、この病気もMRIやCT等の検査で発見する事はできません。この病気のもう一つの特徴として頻尿や便秘、下痢などの膀胱直腸障害を伴う事が多いので診断を下す場合の大きな手掛かりとなります。また、最近では50歳以降でもこの症状が出現しうる事がわかってきました。

 

診断の目安として以下の5つの項目を書きます。

  1. 腰痛、または下肢痛がある。
  2. 体が硬い。お辞儀をした時に指先と床の距離が20cm以上ある。
  3. 膀胱直腸障害(頻尿、便秘、下痢)がある。
  4. 画像所見では異常がない。
  5. 最大前屈位で首を下げると痛みが強くなり、その位置で首を上げると軽くなる。

 

まずは保存的治療が大切

治療としてはまず、終糸がある部位を温めてほぐしていきます。この病気は慢性をたどっている方が多く、最低1ヶ月から3ヶ月の保存的治療をためす事が第一の選択肢となります。

 

それでも改善がみられない場合に限り手術の適用となります。手術の方法は単純で硬くなった終糸を切断する事です。ここで気を付けなければならないのは、この手術に対して医療界では反対意見も多いため、安易にこの手術に同意するのは避けたほうが良いということです。

 

当院では画像(レントゲンやMRI等)に写らない腰痛の患者さんが多数来院されていますが、慢性の腰痛等でお困りの方はまず一度診断を受けるのを考えてみて下さい。遠方の方であれば、予約して頂ければゆっくり診ることが可能です。また、近くに専門の病院があれば紹介します。