お尻や腰、下腹部、鼠径部まで痛い「仙腸関節障害(腰痛)」とは
もくじ
仙腸関節障害は、内科系の病気と間違うことも
仙腸関節障害(せんちょうかんせつしょうがい)とは、仙骨と腸骨との間にある関節の障害のことをいいます。
主に腰痛を訴える患者さんが多く、痛みが慢性化してくると臀部(お尻)、下肢全体(脚すべて)、そけい部(股の付け根)、下腹部、胸背部など痛みがあらゆるところに及んでくるのが特徴です。重傷になると、立つのも座るのも困難となり、仰向けでの安静及び睡眠も非常につらくなってきます。
仙腸関節障害は、レントゲンには写らない
病院ではレントゲン写真、MRI等の検査をしても異常がないと言われ、投薬や保存的な治療を開始します。しかし、残念ながら仙腸関節障害と言う病名すら知らない病院がほとんどで、治療の効果がなかなか上がらないのが現状です。
担当医の先生も患者さんの痛みが余りに強いと入院をしてもらい、硬膜外注射や神経根ブロック注射をするのですが、それでも改善しない患者さんはかなりの数にのぼるのではないかと思われます。
腰痛を訴える方の3〜4割は仙腸関節障害
当院の経験では、腰痛を訴える患者さんの30〜40%近くは仙腸関節が原因と思われます。
なかなかはっきりとした診断がつかないために内科、泌尿器科、神経内科等に回され、そこでも原因が判らず最終的には精神科に行きつき、精神的なストレスが原因でしょう?といわれる患者さんが非常に多いと思われます。
患者さん自身が段々と追い詰められていく場合が少なくありません。実は、私自身もこの症状に悩まされているので良く判るのですが、はっきりとした診断がつかないと患者さんは精神的に参ってしまいます。
仙腸関節障害の診断は難しくない
まず、この病気はいち早く正確な診断をしてもらうのが非常に重要です。 そして、病院にしろ接骨院にしろ、この病気に理解のある先生に治療をしてもらうのが先決です。患者さんによって病気の程度や他の原因との関係など、病気は一人一人微妙に違うので、過度の宣伝をうたっているところは避けた方がいいでしょう。
診断としては、痛みの箇所(ワンフィンガーテスト、ニュートン変法)、どの部位に痛みが放散しているか、どのような体位がつらいのかなどを調べていけば診断を下すのはそんなに難しいものではありません。
そして、仙腸関節障害と診断が確定したならば、この病気自体の痛み(トリガーポイント)ははっきりとしているので、上後腸骨きょく(PSIS)の周辺を中心として治療を進めていきます。
仙腸関節障害のバイブル
この鑑別診断において私のバイブルとなっているのが、JCHO仙台病院(旧仙台社会保険病院)の村上先生が書かれている『診断のつかない腰痛』という医学書です。治療者向けに書かれている内容ですが、一般の人(患者さん)にも参考になると思います。
何度も私自身が患者の立場で村上先生にお会い出来たのですが、非常に忙しい外来をこなしながらも一人一人の患者さんと真摯に向きあっている姿には感動すら覚えました。
一人で悩まず諦めないで
急性腰痛(いわゆるぎっくり腰状態)で当院に来院される患者さんの30%近くは仙腸関節由来の痛みと考えられます。私の経験から言えば、急性の障害であればあるほど治療期間も短くて済んでいます。慢性化して強い痛みの場合は、仙腸関節障害に理解のある病院または医院と連携をして治療を継続していく場合もあります。
決してあきらめずに自分に合った治療法を一緒に見つけていきましょう。