病気の解説
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病院で分からないお尻の痛み「上臀皮神経障害」

認知度がとても低い疾患

医療関係者、特に専門分野と言える整形外科や脳神経外科、神経内科、ペイン等の先生方の間でも、上臀皮神経障害(じょうでんひしんけいしょうがい)という診断名を理解され、実際に臨床で使われている方は残念ながら非常に少ないと思われます。残念ながらそれが今の現実でしょう。

 

仙腸関節障害に対しての理解は、一部の先生方の努力と広報活動によって少しずつではありますが認知されてきました。仙腸関節障害の診断については、接骨院や整体、カイロ等の方がある意味(解剖等の理論はないにしろ)では、いち早く治療に取り入れていたと言えるかも知れません。

 

しかし、上臀皮神経障害に関しては、残念ながら接骨院等の先生方の間ではほとんど理解不能だと思われます。日本におけるこの疾患の第一人者は、北海道にある釧路労災病院の井須豊彦先生だと思います。横浜では青田先生、日本医科大出身の金先生、森本先生方もこの疾患に対して積極的に治療に取り組まれておられます。

 

お尻や腰の痛みが特徴的

症状としては腰痛、お尻の痛みを主訴とし、仙腸関節の痛みと似ているところが少し重なります。

 

ちょっと難しいですが、痛みの原因となる場所は、腸骨陵上の後正中より約7-8cmのところです。上臀皮神経がちょうど腸骨陵を乗り越えるところで、胸腰筋膜を貫通する際に圧迫されるのが原因です。腸骨陵上の上臀皮神経の部分を押すと、お尻への放散痛(チネルサイン)を確認できます。

 

治療としては、保存的にあらゆる方法を使って拘束場所を緩めていきます。それでも駄目な場合は、保存的治療とブロック注射を並行していく方法も効果的だと思います。それでもダメな場合のみ、局所麻酔下での手術をする方法が最終的な選択になります。

 

レントゲンに写らないことも

この疾患も仙腸関節障害と一緒で、レントゲンやMR等の検査では見つからない疾患なので、患者さんが訴える場所を的確に把握することが大前提になります。

 

ヘルニアの手術は上手くいったはずなのに、お尻の痛みあるいは下腹部痛が残って職場に復帰できない患者さんが少なくはないので、今後この疾患が鍵を説く一つの大きな部分を占めていくだろうと思います。